厚生労働省は今年も平成31年度の「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを展開しました。これは、多くの新入生がアルバイトを始める4月から夏休み前の7月までをキャンペーン実施期間として、学生がアルバイトを始める前に労働条件の確認を促すことを目的とするものです。実施内容は、学生への周知・啓発と、労働局による大学等への出張相談などを展開し、今年で5年目となります。 「ブラックバイト」により、学業に専念できずに留年や退学に追いこまれるような事態が社会的問題となりました。厚生労働省は「確かめよう労働条件」というサイトを作り、啓発を開始し、事業主へのリーフレット配布も講じています。
アルバイトでも労働基準法が適用されます! そして、2019年4月から働き方改革関連法が順次施行されるなか、事業主・労務管理担当の方は、自社のアルバイトの雇用に必要なポイントと、やってはいけないNG条件を確認しておきましょう!
キャンペーンにおける、アルバイトを雇う際に確認する重点事項5ポイント
1.アルバイトを雇うとき、書面による労働条件の明示が必要です!
2.学業とアルバイトが両立できるような勤務時間のシフトを適切に設定しましょう!
3.アルバイトも労働時間を適正に把握する必要があります!
4.アルバイトに、商品を強制的に購入させることはできません。また、一方的にその代金を賃金から控除することもできません。
5.アルバイトの遅刻や欠勤等に対して、あらかじめ損害賠償額等を定めることや労働基準法に違反する減給制裁はできません。
それでは、それぞれの内容について具体的に確認していきましょう。
アルバイトを雇うとき、書面による労働条件の明示が必要です!
「労働条件通知書」などの書面を交付し、労働条件をしっかり明示する必要があります。特に次の6項目については必ず書面で明示しなければなりません。
(1)契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること)
(2)契約期間の定めがある契約を更新するときのきまり(更新があるか、更新する場合の判断のしかたなど)
(3)どこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容)
(4)勤務時間や休みはどうなっているのか(仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、交代制勤務のローテーションなど)
(5)バイト代(賃金)はどのように支払われるのか(バイト代の決め方、計算と支払いの方法、支払日)
賃金は都道府県ごとに「最低賃金」が定められており、これを下回ることはできません。
また高校生アルバイトや雇入れ後の研修期間中も、最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。
(6) 辞めるときのきまり(退職・解雇に関すること)
学業とアルバイトが両立できるような勤務時間のシフトを適切に設定しましょう!
学生の学業とアルバイトが適切な形で両立できる環境を整えるよう配慮する必要があります。試験の準備期間や試験期間中などに、学生の希望に反するシフトを入れないようにする配慮が求められます。また、採用時に合意したシフトの変更などの労働契約の内容の変更については、労働契約法第8私見条により、使用者が一方的に急なシフト変更を命じることはできません。
アルバイトも労働時間を適正に把握する必要があります!
アルバイトについて、タイムカード等の客観的な記録から始業・終業時刻と実際の労働時間を把握する必要があります。また、就業を命じられた業務に必要な準備や片付けの時間や、参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練を受講していた時間も労働時間とする必要があります。原則として労働時間の端数は1分でも切り捨てることはできません。
さらに、アルバイトに法定労働時間(原則は、週40時間、1日8時間以内)を超えて労働をさせる場合、時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)を締結し、所轄の労働基準監督署長に届ける必要があります。
アルバイトに、商品を強制的に購入させることはできません。また、一方的にその代金を賃金から控除することもできません。
アルバイトが希望していないのに、商品を強制的に購入させることはできません。また、アルバイト本人が希望して商品を購入した場合でも、賃金から、労使協定なしに一方的に商品代金を差し引くことは、労働基準法に抵触します。
アルバイトの遅刻や欠勤等に対して、あらかじめ損害賠償額等を定めることや労働基準法に違反する減給制裁はできません。
アルバイトが遅刻や欠勤などによる労働契約の不履行や不法行為に対して、あらかじめ損害賠償額等を定めることはできません。
遅刻を繰り返すなどにより職場の秩序を乱すなどの規律違反をしたことへの制裁として、就業規則に基づいて、本来受けるべき賃金の一部を減額する場合であっても無制限に減給することはできません。1回の減給金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。また、複数にわたって規律違反をしたとしても、減給の総額が一賃金支払期における金額(月給制なら月給の金額)の10分の1以下でなくてはなりません。
【その他】「学生アルバイトの労働条件に関する自主点検表」
「高校生等のアルバイトの労働条件に関する自主点検表」
アルバイトを雇う側のための自主点検表で、違法な扱いに気づく手がかりになります。また、高校生及び高等専修学校生のアルバイトについては、18歳未満の年少者もおり、年少者については労働基準法の特別の保護規定が設けられています。
●厚生労働省
「学生アルバイトの労働条件に関する自主点検表」
●厚生労働省
「高校生等のアルバイトの労働条件に関する自主点検表」